森薫作、乙嫁語りは19世紀初頭のカスピ海近くの中央ユーラシアで12歳の男の子が年上のお嫁さんを貰う話。「山を超えて遠くの村から馬にのってやってきた花嫁さんは花婿より8歳年上だった」というのが作中の文章。
森薫先生の代表作である「エマ」は1890年辺りのイギリスの社会構造、生活、文化などを適度なフィクションを混じらせて淡々と描いたけど、弟嫁物語もほぼ同じ。違う時代の空気、違う世界の「普通」を感じさせてくれる。それだけに細かく、綿密な絵が何気なく舞台を描き出している。
嫁ぎ遅れの花嫁さんのアミルと少しずつ打ち解けてゆく花婿のカルルクをゆっくり、優しく見守っている感じ。
正直、憧れるような人が一杯登場していく。馬に乗っての物追い射でウサギを狩るアミルは綺麗で、作者も本当にこういったのが好きなんだなと伝わる。馬に乗る事はできるし、弓も多少は扱う経験もある。それだからこそ駆ける馬の背からウサギに矢を射かける難しさは理解できる。それが普通に生活の一部であるアミル、と同じ時代に住みながらもその技術を必要とせず驚嘆を覚える新しい家族。とりとめのないやりとりが惜しみなく魅力たっぷりに綴られている。
さらにいえば年が行き過ぎた嫁に心配する親戚。他の氏族との関係を保つ為にアミルを返せという実家。12歳でも「若い大人」として扱われ、お酒を振る舞われるカルルク。生活習慣の違いがファンタジーに匹敵する。本当にありそうな分、非現実的に感じる所もまた面白い。
何にしろ、これはオススメ。乙嫁語り 第一巻。
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